かって光はボールのように光源の進行方向に曲がる、いや発射された方向にまっすぐ飛んでいくという論争がありました。相対性理論の解説書によくでるM.M実験ではB/Sで反射してM2に向かう光はSinθ=c/vなる角度θで傾くとされています。これはなにを根拠としているのでしょうか。光をボールのような物質と考えればこの角度は理解できますが、当時光は波動と考えられていましたから波の反射から導き出すのが本筋でしょう。
光の反射の計算ではホイヘンスの原理を使用することができます。この場合移動するB.Sで反射する光線がどのように角度で反射するかを計算するわけです。
ホイヘンスの原理において光線の波面を構成する最小の波を要素波とします。(詳細は教科書、ウエブサイトを参考にしてください。)
直径d(微小)の平行光線を考えます。この光線の下縁(一番下側)がB.Sに達した時そこから最初の要素波が速度cで発生します。さらに上縁(下縁から上にd離れた部分)がt秒後にB.Sで反射すると考えると、その時間tはB.Sが静止している場合より少し遅れます。そしてその時間に上縁からの要素波が発生し始めます。その時下縁から発生した要素波は図の半径ctの円を描いています。B.Sが静止状態であればctはちょうど半径dになるはずでしたがtが少し大きな値のため要素波の波面は上縁を越えます。したがってB.Sで反射した波の面は少し傾きます。
この傾きがSinθ=c/vになるのかを検証するのがこの項の目的です。
図の(x.y)を求めそれから角きを算出することができます。必要な条件は図に書いてある通りです。
式の過程は結構面倒なので結果だけ書きます。詳細を知りたい方は筆者の本を見てください。
Tanθ=v(2c-v)/2c(c-v) となります。
Sinθ=c/vは書き換えると
Tanθ=v/root(c~2-v~2 )ですからまったく違う式となります。
この観測装置の規模程度では両方の式で算出した値には観測精度上問題になるほどの差はでません。
しかしあくまでSinθ=c/vは近似であることは認識すべきでしょう。むしろこの式が光がボールのように曲がることを連想させる意味では有害かもしれません。
右図のように月面上で太陽のある位置を地球のB.S経由で観測すると両式ではvが30km/sでも11mものずれが生じます。けっして大きくない差です。
なおTanθ=v(2c-v)/2c(c-v)の式は次の考え方でも算出できます。すなわち観測装置が移動していない状況で光線の下縁がB.Sと交わる点と上縁がB.Sと交わる点を結ぶ線上に傾いた仮想のB.Sで光が反射した場合する場合です。
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