1次波は2ルート、2次波は4ルート存在します。
それぞれのルートの距離は右図より
1次波:
A+2L1+B
A+2L2+B
2次波:
3A+4L1+B
A+4L2+3B
3A+2(L1+L2)+B
A+2(L1+L2)+3B
となります。
これらを分析するのはたいそうに見えますが、観測視野内で優先的に見えるのは、もっとも強い光線同士の干渉縞でありさらに曲率半径においてもっとも差のある光線同士の干渉縞となります。そうすると1次波と2次波それぞれの合成波同士のそれが対象となります。
さらに今回は1波長よりはるかに小さい位相のずれを観測するので、分析にあたっては上記の式の各ルートから1波長の整数倍の長さは除去できます。またその残った1波長以下の値の加重平均が合成波の1波長以下部分の波の長さとなります。それぞれの経路の1波長以下部分の波の長さをΔであらわすと、
1次波のルート:
ΔA+2ΔL1+ΔB
ΔA+2ΔL2+ΔB
2次波のルート:
3ΔA+4ΔL1+ΔB
ΔA+4ΔL2+3ΔB
3ΔA+2ΔL1+2ΔL2+ΔB
ΔA+2ΔL1+2ΔL2+3ΔB
となりますので
1次波の加重平均:
ΔA+ΔL1+ΔL2+ΔB
2次波の加重平均:
2ΔA+2(ΔL1+ΔL2)+2ΔB
となり、これらの値の変化が干渉縞の移動につながります。ただしA、Bの部分の変化は今回の観測の対象外であるのは明らかです。
M.M実験の目的は0°及び90°の方向に観測装置を方向転換することにより光の経路L1、L2の伸長を干渉縞の動きとして観測することでした。そしてこの二方向それぞれへの光の経路の伸長率では、観測装置の方向が変わると互いに入れ替わるのが特徴です。すなわち0°に観測装置が移動する場合のLIの経路の伸びをΔ1、L2の経路の伸びをΔ2とすると90°に観測装置が移動した場合ではLIの経路の伸びはΔ2、L2の経路の伸びはΔ1でそれぞれの値が変わるわけではありません。
再度上記の加重平均を見ると両方に項(ΔL1+ΔL2)が含まれています。観測装置が一定速度で動いている場合0°と90°の間の方向転換だけではこの値も変わることはありません。式で表してみましょう。
0°方向 ΔL1→ΔL1+Δ1 、ΔL2→ΔL2+Δ2 であるから
(ΔL1+ΔL2)→(ΔL1+Δ1+ΔL2+Δ2)
90°方向 ΔL1→ΔL1+Δ2 、ΔL2→ΔL2+Δ1 であるから
(ΔL1+ΔL2)→(ΔL1+Δ2+ΔL2+Δ1)
で値はまったく変わりません。すなわち方向転換では干渉縞は動かないことになります。
45°方向も計算すると値は変わりません。
以上マイケルソンとモーレーは縞が移動しない方向だけを観測し、移動しないと騒いでいたことになります。
なお全方向でこの値が変化しないわけではありませんがその変化は元の予想に対してはるかに小さい値となるでしょう。
以上
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