これが正しいかどうかは後の項で述べます。筆者の考えでは近似値として正しいという結論になります。
ここでは元の実験の考え方を踏襲します。
この実験の優れた点は観測装置が移動しても 観測の基準が担保されることでした。具体的に書くと次のようになります、
2本のルートを通った光線はB.Sで再び集約され干渉しレンズを通すことにより縞として見えます。もしB.Sを出た光がレンズに到着する前にレンズが動くと観測の基準が動いてしまうことになり正確な縞位置の観測などできないことになります。これを防ぐには観測装置の移動に応じて感触の基準がずれないように光線をレンズの移動方向に傾けなければなりません。たまたま先に述べたように光がほぼSinθがv/cとなるθで傾くので自動的に観測の基準が調整されるのです。しかしこれはアームの長さが全く同じ場合にだけ成り立ちます。理由は
1.アームの長さが違うと等傾角干渉が発生する。
2.その結果光線の傾きにより基準となる点の明るさが変化してしまうので全ての縞が移動する。
です。
結局基準は右図でCosθ=1となるθですからθ=0°の方向すなわち観測装置が移動していない場合の基準位置となります。
もし観測装置の移動速度の速度が30km/mならv/c=30/300000=1/10000で一見観測精度上問題ないように見えます。しかしアームの長さの差がこの精度に影響を与えます。
2つの場合に分けて考えます。
1.
2つの反射鏡が直角でB.Sは45°に傾いている場合(すなわち理想状態)
この場合はアームの長さを相当長くしないと環が見えないの前に書いた通りです。
仮に2dを0.03mすなわち光の波長の5×10の4乗個とします。光線の傾きによる位相の変化は
2d(1ーCosθ)ですから0.03m×(5×10の-9乗)=1.5×10の-10乗mとなります。
光の波長は6×10の-7乗mですから1波長の2.5×10の-4乗分の狂いが生じます。
最初の実験では1波長の1/100の動きを想定したので観測は可能な範囲ではあります。
v/cの変化に対して2d(1ーCosθ)の変化が小さいのはCosθの変化はθが0°付近では鈍いことが理由です。
2.M2の反射鏡が傾いている場合
この場合先に書いたようにアームの長さに差がなくても縦縞が見えます。
観測装置が0°方向に進行すると仮想光源1と2とを結ぶ距離dの線分も傾くため仮想光源1と2の間に等傾角干渉に影響を及ぼす位相のずれが発生します。
その値ΔはΔ≒dSinα(ただしSinα≒v/c)となります。
1と同じ条件の場合Sinαは1/10000ですから一見観測の精度に影響はないように見えます。しかしdが例えば1波長の100個分とするとΔは1波長の1/100に該当することになります。当初の観測目的であった縞の移動は1波長の1/100ですからこの目的の縞の移動は正確には観測できないことになります。
以上から理想状態ではアームの長さの差をかなり大きくしなければならないだけでなく、アームの長さを変えずに縦縞を観測する場合でも別の大きな問題の発生が予想されるのに実際の実験ではそれが考慮されていないことになります。
そして本当の問題はこれらを含めた予想される縞の動きが全くないことであります。
この解決方法を次の項で述べます。
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