まとめ1.の解説
観測された多数の円環状の縞模様は等傾角干渉によると言われています。この実験機器では45°に傾いたB.S(ビー ム.スプリッター)で一本の放射状の光線を二本に分割し二つの反射鏡経由で再び一本に合流させています。光線が何度も折れ曲がりイメージしにくいので、折り紙の 折れ線部分を元に戻すようにすると、右図のように典型的な等傾角干渉の形になります。
アーム長の差の2倍(2d)の距離がある光源が半波長の場合にもっとも強く干渉することになります。
アーム長の差を徐々に長くしていくと、中心から環が湧き出すように拡がっていき、2dcosΘが光の半波長の整数倍になる距離でちょうど縞が見えます。
アームの長さの差dが半波長 λ/2である場合を考えて見ましょう。
2dが光の波長の半分(λ/2)になると中心軸の方向1で凸レンズを通して観測すると中心軸の方向でもっとも明るくなりますが、この周辺はぼんやりと広がっており、観測には不向きです。次の干渉環はθが90°の方向2ですからこれも見えません。
3番目の干渉環は2dが1波長に該当する場合に方向3で発生します。Cosθが1,1/2,0すなわちθが0°、60°、90°の方向で干渉縞が発生するので、これも図の方向1からではよほど大きなレンズを使用しない限り見えません。
2dが3λ/2の場合、Cosθが1,2/3,1/2,0となるθ、すなわち0°,48°,60°,90°で干渉環が発生します。この場合も観測用レンズ視野には入りません。
上記のように2dが増加するにつれて環も増加し、新しい環は中心軸に近い側に位置することになります。またその環は2dがある程度大きくないと観測視野内での観測ができません。
ではどれくらいの2dが必要か計算してみましょう。
もし2dがnλに該当すると一番中心軸に近い環はCosθが(2n-1)/2nとなるθが作る干渉環となります。
実際に使用されたレンズの口径は不明ですが、最初の実験ではアームの長さは1.2mでした。 レンズの口径は不明ですが仮に0.02mとするとSinθは半径/光行路の長さですから、0.01/2.4であり、 cosθは0.9999913となります。中心軸に一番近い環の作るCosθがこの値より大きくなければ中心軸方向からの観測はできません。なぜなら環が凸レンズの範囲を越えてしまうからです。この値を満足させるには、2本のアームの長さの差が十分大きい値を持つ必要があります。Cosθは10のマイナ
ス5乗のオーダーですから大雑把に言って、波が波長×10の5乗個以上の長さの往復光路差を持たせないと干渉縞は観測視野に入らないことになります。もし2dが波長×10の5乗個丁度であればCosθ=99999/100000=0.99999でまだレンズの範囲に入りません。この実験で
の光線の波長は6×10のマイナス7乗であるから、この差は2dが0.03mである場合に相当します。上の説明が解りにくければ(2n-1)/2n=0.9999913となるnを求めそれに光線の波長を乗じてください。0.035mとなり上記の説明にほぼ一致します。実験で使われた光線の干渉性が悪く、
数十μmの光路差以内でないと、干渉縞が見えないとされていました。数十μmがdのことを意味すると考えると波100個単位以下に該当しますから更に観測視野外に環が存在することになります。
上記の説明ではビームスプリッター(以下B.S)が光の方向に対して45°、2つの反射鏡は光の方向に対して90°を保たれていると仮定しました。その結果見える干渉縞は円形になります。もし反射鏡またはどれかが少し既定の角度よりずれていると干渉縞は環にならず縦縞になります。この場合はどうなるかまとめ2以降で述べていきます。
以上